おにぎり屋たんと【事業拡大編】~第四話~

今回は、おにぎり屋たんと【事業拡大編】第4話。

 

初めてご覧いただく方は是非

おにぎり屋たんと【事業拡大編】第1話

からどうぞ。

 

 

土間から奥の部屋へと延びる通路の入り口には

藍色ののれんがかかっている。

そののれんをかきわけて声のした方へと進んで行く。

歩く通路は特に枝分かれしている訳でもなく、迷うことはない。

天窓から差し込む柔らかい光で明るく照らされていて

入り口ほど暗くもなく気持ちが良かった。

程なくして進んだ先、昔はおくどさんだったのだろうその場所には

今は台所がしつらえてあり、そこに目指す人物が立っていた。

いや、正確にはしゃがんでいた。

 

『ああ、ごめんなぁ。

今漬け物の様子を見ててな?手が離されへんかったんよ。』

 

そういう奥さんは笑いながらぬか床を混ぜている最中で。

側には今取り出したらしい胡瓜や茄子や人参が皿に盛られていた。

 

「わぁ、美味しそうですねぇ。奥さんずっと漬けてはるんですか?」

 

手にしていたおにぎりを一言断ってから部屋の上がり口に置くと、

目線を合わせるようにしゃがんでぬか床に目をやった。

 

『そうなんよ。お嫁にきた時に持たされてな?

それ以来ずっと漬け物は自分で漬けてるんよ。

ぬかの管理は生き物みたいなもんやから、大変やけどな。

自分の味って感じがして好きやねん。』

 

得意げに語るお馴染みさんの話にへぇ~、

と感心するように相づちをうった。

私もおにぎりの具に自家製の漬け物を使っているが、

実はそれは母のもの。

少し時間に余裕が出来たら、やりかたを教わって

自分で作ってみようかなと考える。

 

『市販のもんでも美味しいのあるけどなぁ・・。

最近ほら・・・色々あったやん?』

 

からからと笑うお馴染みさんの言葉に頷く。

うちの母も同じことを言っていたからだ。

 

『そんなんもあったからか、それやったら地元の野菜を使って

自分で作るほうが安心やんって余計に思うようになってん。

おねえちゃんのとこも具にえらい拘ってるやろ?

そやからあんたのとこのおにぎりは安心して食べれるし好きやで?』

 

「もう、いややわぁ。奥さん、

今褒めたって持って来た以上のおにぎりは出されへんのに。」

 

おおきに、と言いながら照れ隠しに軽口を叩く。

・・・・確かに、安全な食というものが求められているし。

一時期はおにぎりの具材にこだわりすぎだろうか

と色々悩んだこともあったけど。

無駄じゃないって言ってもらえたようで・・認めてもらえたようで嬉しかった。

 

そんな感じで配達に来たというより井戸端会議をしに来た状態になっていると。

 

『なんや、あんた居るやないの。返事くらいしよし。

外から声かけてるのに全然反応ないから勝手にあがらせてもろたで?』

 

さらに、近所の人が会話に加わることとなったのだった。

 

第5話へ続く。

 

税理士法人 久保田会計事務所                           

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