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訴訟社会と税務

2009年02月23日

訴訟社会になったとよく言われています。

争いごとを、話し合いで決めるのではなく、裁判で決めようとする

動きですが、当事者間の解決方法としての直接的な効果だけではなく、

判決なり、その結果が、間接的に税務にも及ぼす影響が大きくなって

くると感じた事件がありましたので、少し紹介します。

 

先日、日経新聞社の株式譲渡に関する最高裁の判決が下されました。

日経新聞社の元社員が譲渡した日経新聞社の株式譲渡に対する制限

の有効性を認める内容となっています。

 

以下、新聞報道の概略です。

 

日刊新聞を発行する新聞社では、日刊新聞法という法律に従って、

株主資格を事業に関係ある者に限定することがみとめられています。

この法律を適用している新聞社は多いと思われます。

 

しかるところ、日経新聞社では株式の売買を管理するため、社員等

で構成する団体である「共栄会」を設立して、株式売買の金額や、

方法などを規則化し、社員株主制度を機能させてきました。

 

今回、訴訟になったのは、元社員が、共栄会の規則に反して、決め

られた譲渡価額100円/株ではなく、1000円/株で他の元社員

に譲渡したことについて、会社がこの譲渡を認めなかったことから、

元社員が提訴したものでした。

 

結果、この譲渡を無効とする日経新聞社が勝訴しました。

以下の4点について検討した結果となっています。

①制度の趣旨や目的に合理性があるか

②株主に一方的に不利にならないか

③自由意志による合意だったか

④投下資本の回収が不当に妨げられていないか

 

注目したいのは、この株式の相続税評価額はいくらになるのか、

という点です。通常の評価方法を適用すれば、日経新聞社ほどの会社で

あれば、おそらく、100円/株であるとは考えられません。

 

しかしながら、流通する金額は100円/株に制限されることになり、

相続税評価額についても100円/株としなければ、担税力から

考えても不合理に思います。

 

当然、判決の中には相続税評価については一切ふれていませんが、

非上場株式の相続税評価額は大変高額になる場合が多く、

事業継承の大きな障害になることが多くあります。

 

一般の会社でも、今回の「共栄会」のような社員持株会を

設立している会社があります。私のお客様にはありませんが、

中には、節税だけを目的としたとしか思えないような

社員持株会もあるように聞いています。

 

そこで、社員持株会で定めた種々の規則について、

改めて今回の判決(上記4点の条件)と照らし合わせて、

制度上の不備がないか、確認しておく必要がでてきました。

 

うっかりすると、節税を否認されたり、株主構成や持株比率が

変わってしまい、会社の運営にも支障がでる場合も予測できます。

 

昨今では、税務に関する訴訟も多く、私自身、補佐人として

弁護士さんと一緒に裁判に参加することもあります。

通常税務の現場で一般的に検討されるのは、税金に関する訴訟記録

や裁決例となるのですが、改めて、税務以外の訴訟記録も確認してお

くことの重要性を認識させられました。

 

税法には、曖昧な規定も多く、実務上の判断に迷うことも多くあります。

今後も、いくつかある判例や裁決例などを駆使して、適確な税務判断を

提供できるよう、専門家として頑張っていきたいと思います。

 

ご支援よろしくお願い致します。

 

税理士法人久保田会計事務所 税理士 久保田博之

 

              
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